2021-12-01から1ヶ月間の記事一覧

ガールフレンドイズベター

Sから大晦日のストップメイキングセンスに誘われたけど断ってしまった。Sに話したいことがいくつかあった。Sは多分結構気を遣ってくれている。大概そのときにはすぐにわからなくて、後で思い出して気づく。 薄暗い部屋で点滴打たれながらチェット・ベイカ…

アーモンドのチョコレート

ゆらゆら帝国聴いていたら、昔に2回くらい適応障害と診断されたことを思い出した。だからなんだということもないけれどその事実を書いておいたほうが自分にとっていいような気がして書いておく。あまり人に言うことでもないし、特にオフィシャルな場では不…

いつもそんな気分

熱が出そう。腰のあたりの身体の奥底か皮膚の表面かわからない場所がちりちりとさざめいて、顔の中いっぱいにたぷたぷとぬるま湯が入っているみたいで、手足ばかりがいつまでたっても冷たい。物体になれない生煮えの思考が浮かんではぐるぐると渦巻いて、あ…

メロウ

夢を見てるような感じを忘れないで、よくあるメロドラマみたいな感じでね、三つ数えたら立ち上がって、そこは晴れている日の青い芝のような匂いがするはずで、明るくて影ひとつない、何も変えてはいけない、いつもどおりひとつずつやるだけ。しっかり立って…

天使

市井の人がどんなふうなことを思いながら暮らしているのか知りたいと、最近そういったことを漠然と思うようになった。難解な思考とか世の中への提言とかまっすぐな信念とかそういう、大きくて揺るぎないものも大事だけれど、今わたしが興味があるのはそうい…

気晴らし

20世紀初頭のイラストが大好きだった。ジョルジュ・バルビエ、シャルル・マルタン、ジョルジュ・ルパップ、ポール・ポワレ、小林かいち、高畠華宵といった名前を調べてはうっとりしながら画集をめくっていた。模様みたいにきれいな女の人たちは百年前の遠い…

正しさ

アイシャドウがなくなって捨てた。化粧品や花を捨てる一瞬の陶酔が好きだ。冬の雨はまるで氷に変わる寸前。喪失は誰にも気づかれないひそやかなものであるべきで、その後を、ぽっかり空いてもう戻らない空間を眺めて、温度のない生活を繰り返して、ひとりき…

無題

三日半寝込んだ。二人の人のことを考えていた。ひとりはわたしの鏡になってくれる人。いつでもわたしのことを深くまで理解してくれて、わたしの欲しい言葉をくれる。その人の前ではどんなに寂しくても悲しくても許されるし、誰にも言えなかったことを言える…

五番目の話

あなたが好きになるものはいつも魅力的だった。万華鏡のような文章を連ねる作家も、秋の名残を冷ややかな手触りで描ききった画家も、突き抜けるような空色のワンピースも、なんてことないオレンジ色のシャープペンシルでさえ。わたしはいつからかあなたが目…

砂糖

上野駅公園口はすっかり小綺麗なつくりになっていて見知らぬ駅のようだった。広い出口を出て、人が閑散と立っていて上野公園へと続く道を見渡せば、左手の歩道橋は変わらない、あの歩道橋の階段を誰かと登って歩いたことがある、その事実が突然に大きなもの…