2022-01-01から1ヶ月間の記事一覧

使い古された喜び

週末、高田馬場でオールド・ジョイを観た。隣に座った人は申し訳ありませんと言いながら開始直前に出て行って、二度と戻らなかった。それから人同士の分断について考えていた。ずっと一緒にはいられない。それはどうして? 悲しみは使い古された喜びって本当…

薬と金属

金属と薬品と煙が混ざった匂いがした。無機質なのに人肌のぬくさがある匂い。よく知っている。知っているつもりになっている。今でも。今になったから。何も知らなかったのに、出来事は時間が経つほどに風にさらされて角が取れ、隙間は埋まってゆく。気がつ…

光の粒

大森の辺りに来ると真っ先に、あ、地面が低い、と感じる。なんでだかわからないけどそう思う。快速特急に乗って大森を通り抜けてそのときも同じように、いつもより低いところに来た、と思った。不思議だった。海の近くで必ず感覚が働くというわけでもなく、…

好ましさについての覚書

誰かに対して感情を持つことがある、その感情は生活を取りまいてきた環境の影響を自覚しないうちに色濃く受けていて、もっと言えばイデオロギーや社会通念の中で文化的に構築された枠組みに準拠して育まれるのだ、そんなことになんとなく気がついたというか…

彼の創意によって無化された彼女について私が知っている二、三の事柄

彼女を無化することは彼の創意なのだ。 ―レベッカ・ソルニット『私のいない部屋』「戦時下の生活」 浅学な身で簡単に書けることか自信ないけれど、ビルドゥングスロマンの主人公の多くは男性なんだろう。『ムーン・パレス』で堕胎したキティ・ウーを思った。…

固有性についての覚書

年越しの1時間くらい前に電話がかかってきて、出たらYだった。声を聞くのはいつぶりかよくわからなかった。少し話して、お互い落ち着いた頃に飲みに行く約束をして、電話を切った。 人の固有性のようなことについて。 その人がその人でなくちゃいけない理…