無題

三日半寝込んだ。二人の人のことを考えていた。ひとりはわたしの鏡になってくれる人。いつでもわたしのことを深くまで理解してくれて、わたしの欲しい言葉をくれる。その人の前ではどんなに寂しくても悲しくても許されるし、誰にも言えなかったことを言える。だめなわたしのままでも一緒にいてくれる。

もうひとりはFで、わたしはFのようになりたいから会いたかった。会えばFのようになれるような気がしていて、その可能性が救いだった。Fが男の子として生きてきたことが苦しいくらい羨ましかった。薄いガラス板一枚隔てたようなところ、見えるような気がするのに絶対に手の届かないところにいて、いつもわたしにはできないことをしてしまう人だと思っていた。

他人は鏡じゃないし、届かない夢でもない。もうFに会わないし心の中でずっと憧れたりしない。わたしにはちゃんと行かなきゃいけないところがあって、自分の足で立たないと。そうしないと世界を理解できない。Fのことを書くのはこれで終わりにする。