DAZNつけてFC東京戦を見始めたら横断幕にかかれたチバユウスケの文字が目に入って、チバユウスケって書いてある、と口をついて、隣にいた母が、休養したミュージシャンの人でしょ、とか言って、そうそう〜とか生返事しながら、それから90分画面に釘付けになった試合は、たぶん私にとっては今シーズン入ってから最も面白くて、あまりにも鮮やかなカウンターだとか無回転ゴールには舌を巻くしかなく、でもフリーキックやPKの駆け引きも見事だったし、納得いかないジャッジにも息を詰めて、それで試合終了のホイッスルが鳴った瞬間は、膝からがっくり崩れ落ちて芝に手をつく人の背中がなんともいえずに悲しかった。アルベルも泣いてたし。勝ちたかったな〜と思いながら振り返ったら、散々注目されてもてはやされている人がロッカールームで膝を抱えて、両腕に顔を埋めるように悔し泣きしていて、ついもらい泣きしてしまう。

今年になってからサッカーを観るようになって選手ごとの特徴だとか好きなプレースタイルだとかそういうものが少しずつわかってきつつあり、パスワークやシュートコースに惚れ惚れしたり一喜一憂するのも楽しくて、何よりも今まさに起こっていることを90分間見続けるということに毎回感動する。二度と再現できないことが人によって繰り広げられていてそれをただ見ている。一回性に立ち会うというのはものすごい。勝ち試合も負け試合も終わったあとは正直同じくらいつらい気持ちになる。こんなものを毎週のように見て、しかもあと数ヶ月は続く。その間にたぶん人がいなくなったり怪我をしたり、調子がよくなったり悪くなったりする。途方に暮れたような気分になる。

 

チバユウスケFC東京のサポーターらしい。そうなんだ。そういえば関係ないけど最近文芸誌めくっていたら津村記久子京都サンガのことを熱っぽく書いていたっけ。そんなことを考えながらミッシェルガンエレファントのライブ動画を見た。アベフトシテレキャスターは凶器みたいだと思う。刃物のようなカッティングと、狼みたいな手足。ばかでかいアベのポスターが貼ってあった、ベッドとギターしかない殺風景な部屋とか、アベが死んだ日は俺の×××だったんだ、というどこか主人公めいた台詞だとか、その数年後に入れこんだ人がやっぱりアベフトシに似ていたことだとかを思い出しながら、わたしでさえもミッシェルガンエレファントにまつわる思い出があるのだから、リアルタイムでライブ会場に詰め寄せたこんなにもたくさんの人たちにも、全員ひとりずつにミッシェルにまつわる膨大な体験と思い出があるのだろう、と思っていたら、なんだかくらくらして、くらくらした頭のまま、アベの画像をiPhoneの背景に設定して、布団に入って電気を消して寝た。