話の続き

気も合わずたいして話も弾まなかったのに妙なざわめきをもって思い出すことに戸惑っていたけれど、その理由はきっとかれが話した女の子にわたしまで恋ともつかない思いを抱いてしまったからだ。今はどの国にいるかもわからないというその子は、一夜が明けると座りこんでしくしく泣いていたという。かれの目から見た儚げな彼女と、彼女が見た凄惨な世界と、粗雑な決断と。それらを想像して無性に心のなかがかき立てられる。伝え聞いただけの女の子はいつだって魅力的だ。ぼんやりと現れてはさっと姿をくらまして、微笑んだと思えば不意に涙をこぼし、抱き寄せようと近づけば腕からすり抜けて。

例えばわたしがかのじょにめぐり会ったとしたら?