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ひさしぶりに毛糸売り場に立ち尽くして胸をときめかせた。朝起きたら机に座って編んで、寝る前は瞼が重くなるまで編む。繰り返すことで生まれる快楽。自我が置いていかれる感じ。反復による官能と、それらの差異について思う。
たとえば金井美恵子による反復のモチーフは終わらない円環。去年マリエンバートではどこまでも上に続く螺旋。滝口悠生はなんていうかフラヌールっぽい。記憶の中をあてもなく歩く。スティーブ・ライヒは細かな直線を繰り返し書き続ける。
ラウンジ・リザーズは去年の秋に聴いていた。否応なく執拗なメロディ。粘着質な長いセックスみたいな曲。パーマネント・バケーションの主人公の名前ってなんだっけ、とぼんやり思いながら編み続ける。アロイシュスだった。鰐みたいな名前。