in-between

突き抜けるような苛立ちを頭の中いっぱいに滾らせて視界一面の色がさらさらと薄くなってゆく、皮膚の内側は可笑しいくらい清らかで優しい手触りのようでいて、感情と相反した身体の反応はまっすぐだ、ある種の整い方をしている反応はバロック音楽の旋律のようでもあり、キッチュだ、という形容がぽんと飛び出すように思い浮かばれながら、果たして俗なものを俗だと鼻で笑う自分を愚かだと嗜めるメタ的な認知に終止符を打つだろうか、私の中の誰かが終止符を打つだろうか、一体誰が、階段を降りて建物を出る、黒々と濡れたアスファルトに大粒の牡丹雪が執拗に落ちてきて、湿った寒さに目が潤む。水分を多く含んだ大粒の雪はぼとぼとと外套や鞄に纏わりついてずっしりと重たくのしかかり、じわじわと体内を侵食する。執拗な通せんぼに困り果てるような心持ちになってゆき、ちかちかと白い雪が視線の邪魔をして、気持ちの行手が阻まれる。雪が頭の中をいっぱいに埋め尽くしてうまく眠れない。一度溶けて凍った雪はわずかな障害として存在するとともに歩行者の生を映して突き返す。ざくざくと軽やかな音を立てて潔白な輝きを汚しながら足元を踏み固めていく靴の持ち主はその軽快な音に幾分かの満足感を覚え、直ちに忘れながら、雪が積もったこと以外には何の変哲もない休日の朝を急ぐ。