月を見ない

真夜中のからだの中にふさぎたくない穴があるってつぶやいていた

 

虫喰いのセーター川に沈めゆく少女だったと言って おねがい

 

収容所塗りつぶした絵が恋しくて真水を抱いて十五夜を待つ

 

人と寝るたびに忘れる 金沢で靴に雪しみた冷たさだとか

 

土を喰う寂しさ知らず月も見ず煙の熱さだけが部屋にある

 

赤ワインに溺れたみたいな死に方をしたんだって裸で読んだ

 

水めいた音を聞いてるこの部屋の来世はきっと沈める寺よ