退屈はしないで

昼夜を問わず一度でもクッション抱えてソファに座り込めばぷつんと思考が途切れて何ひとつ考えることもなく頭の中が空っぽのまま小一時間経ってしまう。絶えず音楽を流していて聞いてない。聞こえてくればなんでもいい。やらなければならないことに向かって身体を動かしてくれる音楽ならなんだっていい。自分にそっくりな人と自分と真反対の人に交互に会っていた。まるきり異質なものが両端に置かれていてそのふたつの点に引っ張られた真ん中で自分の立ち位置を決めている感じがしてどちらに片寄るでもない。少しでも誤れば瞬時に崩壊するような緊迫感の中で妙に心地よく自分の場所を確認する。私に似ている人はまるで自分の女性版と話しているようだと言った。そっか。その人がどうでもいいと思っていることは多分わたしのそれとすごく似ている。体裁もポーズもどうでもいいけどそれに乗ってうまくいくならそっちを選ぶ。それくらいどうだっていいから選べる。私と正反対の人は死に向かう綺麗なものはもうダサいよと笑っていた。そっか。真夜中に降り始めた雨の湿り気と、濡れた地面の青臭い匂いと、真っ白な泰山木の花。以前は人も場所も全部のものが熱くて重たくて真剣に対峙しないと乗りこなせなかったのに、今は、他人を認識するということは一回ごとの体験が積み重なっていくだけだ。存在の質感がさらさらと軽いものになっていく。軽やかさに思考が停止して少しずつどこか違う場所へ連れていかれそうだ。それでもいいと思うときもあるしやっぱりそれはできないと思うときもある。

 

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